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東京地方裁判所 昭和33年(チ)4号 決定

申請人 田辺良隆

主文

本件申請を却下する。

理由

本件申請の要旨は、

(一)  申請人は、田端復興土地区画整理組合(以下本件組合と称す。)を被告として右組合の設立無効確認及び設立認可無効確認請求訴訟(東京地方裁判所昭和二四年(ワ)第四九七七号、昭和二五年(ワ)第五七六号)を提起し、昭和三〇年六月三〇日いずれも申請人勝訴の判決を得、昭和三三年一月三一日右両訴訟事件に対する右組合の控訴が棄却され、同年二月一九日該判決はいずれも確定した。

(二)  右判決確定により右本件組合は解散し、これが清算をなすべきところ、右組合は清算人の就任を欠き、ために申請人は右両事件の訴訟費用確定決定申立をなすことができない実情にある。よつて右組合の清算人の選任を求めるため本件申請に及んだ。

というにある。

本件記録に編綴の証第二、三号証、第五号証によれば、申請事由(一)の事実が認められ、証第二号証によれば本件組合は、特別都市計画法第一条、都市計画法第一二条第二項の準用する耕地整理法第五〇条、第五一条に基き、地方長官(東京都知事)の認可により昭和二三年三月一三日成立した組合であることが認められるが、昭和三三年二月一九日右設立認可無効確認判決が確定したことにより本件組合は解散の場合に準じて清算過程に入るものと解すべきである。蓋し、土地区画整理法施行後(昭和三〇年四月一日施行)においても右各規定に準拠して成立した組合は、同法施行法(昭和二九年五月二〇日法律第一二〇号)第三条により改正前の都市計画法第一二条第二項によることとされ、同条項により依然旧耕作地整理法(明治四二年四月一三日法律第三〇号)の準用をみることとなるわけであつて、設立認可無効確認判決の確定は、商法第一三八条等の法意からみて、当然解散の場合に準じて清算過程に入るものとして取扱われるべきだからである。(なお旧耕地整理法は土地改良法施行法第一条により昭和二四年八月四日廃止せられたが同法第二条によりなお効力を有するものとされている。)ところで、旧耕地整理法、組合が解散した場合何人が清算人になるかについては直接の規定はないが、耕地整理法施行規則第六九条との関係において、組合長が当然に清算人となるべきものと解すべきであるところ、証人守田又十郎、谷田貝桂一、山田常次郎の各証言を綜合すれば、本件組合においては組合長長岡慶信は昭和三〇年一〇月一〇日辞任し、昭和二九年一〇月八日組合副長に就任した保坂錬太郎、古沢清治、谷田貝桂一の三名中、保坂は昭和三三年一月二五日、古沢は同年九月それぞれ辞任したが、谷田貝は引続き組合副長の地位にあり、耕地整理法第七四条第二項により組合長の職務を代行すべき地位にあることが認められるのであつて、組合長の職務を代行すべき地位にある組合副長谷田貝桂一は、本件組合が解散の場合に準じて清算過程に入つた後は当然に清算人としての地位を有することとなるから申請人主張の如く本件組合清算人の就任を欠くものとは認められない。

よつて現に清算人が存在する以上、清算人の就任を欠くとしてこれが選任を求める本件申請は失当であるから、主文のとおり決定する。

(裁判官 長谷部茂吉 上野宏 中野辰二)

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